Vitality Times / 特集

Season Feature #1 Life with Coffee!

「おいしい」はひとつじゃない!

ムクムクムクムク…。“伝説の焙煎人”ともいわれる中川ワニさんが淹れるコーヒーは、粉がまるで生き物のようにふくらんでいきます。それを「コーヒーの声を聞く」とワニさんは言います。確かにお湯を注ぐと粉が応えるようにふくらむ様子は、ワニさんとコーヒーが“会話”をしているかのようです。

「ちゃんと反応を見てからお湯を動かすのがコツ。このふくらみの中でコーヒーの粉がどれだけ自由に動けるかが、おいしさにつながります」

思わず「難しそう」と言うと、「気取ったことは考えず、家のカレーを作る感覚でいい」とワニさん。

「家のカレーは同じルウを使っていても、それぞれの家庭の味になりますよね。みんな好きでしょう?だからって、外食でカレーを食べなくなるわけではないですよね。それが食文化の進歩。コーヒーも同じです。同じ豆を使って、同じ条件で淹れても、淹れる人の個性が味に表れます。家カレーのように、それぞれの家のコーヒーの味があっていいんです。“おいしい”はひとつじゃないんですよ」

大切なのは「まず、自分がおいしい!と思う一杯、もしくは苦手な味を見つけること」と言います。

「その一杯がどう“調理”されているのか。素材である豆の種類、ロースト、淹れ方を知って、自分の飲みたい味を考えることが大事。今、日本のコーヒー文化は境目に来ていると思うんです。流行現象にとどまるのか、生活に根ざした文化になるのか。面白いほうに進むためにも、情報に惑わされず、自分の“大好きな一杯”を楽しむ人が増えてほしいですね」

監修:中川ワニ
焙煎人、画家。1994年に「中川ワニ珈琲」を立ち上げ、店舗を持たない焙煎人として、コーヒー豆の販売や全国各地でのコーヒー教室を開催。
著書に『「中川ワニ珈琲」のレシピ 家でたのしむ手焙煎コーヒーの基本』(リトル・モア)など。

多種多様なコーヒー豆の個性

「コーヒー豆を生産国で語るのは、日本各地のお米をすべて『日本米』と呼ぶのと同じくらい大雑把なこと。例えばコロンビアでも北と南で味が違います。また、ブレンドすることで豆の華やかさが増すこともあれば、個性を消し合ってしまうことも。それがブレンドの面白さ。焙煎の仕方や淹れ方でも味は変わるから、どんな豆でも自分の飲みたい味にできるのが理想ですね」(ワニさん)

コーヒー豆は「その土地の風土を反映した農作物」だと言うワニさんは、焙煎を“調理”と表現します。「僕の場合、焙煎がシティローストの段階までいったときに素材を判断しています。焙煎がうまくいくと、最終的に生豆の倍くらいにふくらむんですよ」

ポイントはふくらみ!
おいしいコーヒーの淹れ方

❶ 挽きたての豆を
  平らに入れる

粉は2杯分で60g。たっぷりの粉で淹れるほうがおいしいので、一人でもお代わりするつもりで。

❷ 中心にお湯を
  そっと垂らす

範囲は500円玉程度の大きさ。
“注ぐ”というより、お湯を“置く”ようなイメージで優しく。

❸ 粉がふくらむのを
  じっと待つ

粉が自然にふくらむので、モコっとふくらみ切るまでじっと我慢。
コーヒーは落ち始めまでが肝心!

❹ 中心から円状に
  お湯を注ぐ

泡が出てくるので、それが凹む前に次を注ぐ。徐々に染みていくため、円は無理に広げない。

❺ 同じく円状に
  お湯を太く注ぐ

下からコーヒーが落ち始めたら、ふくらみを止めないよう泡の動きに合わせてお湯を多めに注ぐ。

❻ 泡がフラットに
  なったら止める

山型の泡がフラットになったら、ドリッパーを外し、味を均一にするためマドラーで軽く混ぜる。

COLUM
コーヒーとカラダの深イイ関係

近年、コーヒーの健康効果の研究が進み、「1日2~3杯のコーヒーを毎日飲む人」は病気のリスクが低いといわれています。例えば、主な成分のひとつであるカフェイン。これは代謝アップや脂肪の燃焼を助ける効果があります。また、コーヒーポリフェノール(クロロゲン酸)には抗酸化力や、糖分の吸収を遅らせ、食後の血糖値上昇を抑える作用も。さらにポリフェノールとカフェインは抗酸化作用と慢性炎症の予防というWの働きで、病気と老化の予防に相乗作用を発揮。もうひとつの有効成分・トリゴネリンは加熱によりふたつに分かれ、それぞれ中性脂肪の増加を防ぐ働き、強い抗酸化作用と副交感神経を刺激する働きを持ちます。がん、心臓病、脳卒中のリスク軽減や死亡率の低下、アルツハイマー型認知症の予防にもコーヒーが効果的であるという研究結果が次々と発表されるなど、毎日のコーヒー習慣は私たちの健康と深く結びついているのです。

監修:岡希太郎
東京薬科大学名誉教授、日本コーヒー文化学会副会長。コーヒーと予防医学の研究における第一人者であり、コーヒー博士ともいわれる。
『がんになりたくなければ、ボケたくなければ、毎日コーヒーを飲みなさい。』(集英社)など著書多数。